双極性障害は、躁(そう)と鬱(うつ)の状態を繰り返す精神疾患であり、症状の管理が難しい場合があります。今回ご紹介するD様は、数十年にわたりこの疾患に向き合ってこられた方で、訪問看護を通じて入院を回避し、安定した生活を送られています。本記事では、訪問看護に至った経緯と支援の具体的な様子を紹介します。
訪問看護に至った経緯
D様は、数十年前に双極性障害と診断され、長年この疾患と向き合ってこられました。特に「躁転」と呼ばれる興奮状態が問題となり、行動のコントロールが難しくなることが度々ありました。
ご相談のきっかけ
D様は、当ステーションのホームページを通じて私たちを知り、連絡をくださいました。ご本人の話によると、躁転すると無銭飲食を繰り返してしまい、その結果、精神科病院に入院することが多かったそうです。過去の経験から、「もう入院はしたくない」という強いお気持ちがあり、「定期的に訪問して、躁転していないか様子を見てほしい」とのご依頼がありました。
訪問看護導入の背景
D様が訪問看護を選ばれた理由は、外来通院だけでは自分の状態を細かく把握するのが難しいと感じたためです。また、生活の中で変化を早期にキャッチし、適切な対応を取れるサポートを求めていらっしゃいました。
訪問看護の様子
訪問看護を開始してから、D様の生活には少しずつ前向きな変化が現れました。以下に、具体的な支援内容とその成果をご紹介します。
1. 躁転の兆候の共有と自己認識の促進
まずD様と話し合い、躁転が始まる前に現れる兆候について整理しました。例えば、夜間の睡眠時間が極端に短くなる、必要以上に活動的になるといった変化です。これらを支援者とも共有し、ご本人が自ら注意を払えるよう働きかけました。訪問看護師が定期的に状態を観察することで、早期介入が可能になりました。
2. 服薬管理の改善
訪問を続ける中で、D様が服薬管理を自己調整していることが明らかになりました。たとえば、症状が安定していると感じた時に薬の量を減らしたり、服用を中断したりしていました。これが躁転を引き起こす原因となることが多く、服薬の重要性を丁寧にお伝えしました。最初は「薬が体に害を及ぼしているのではないか」という被毒妄想を抱えており、服薬に対して不安を感じていらっしゃいましたが、継続的に説明を行い、少しずつ理解を深めていただきました。
3. 入院回避と生活の安定
定期訪問と服薬指導の効果もあり、D様は現在、入院することなく日常生活を送ることができています。また、生活の中で不安や変化があれば、すぐに訪問看護師に相談できる体制を整えています。これにより、「自分一人ではどうにもならない」という不安が軽減され、安心感を得られている様子です。
4. 振り返りと次のステップ
訪問看護の過程で、D様と共にその日の振り返りを行うことも大切にしています。これにより、ご本人の病状に対する理解が深まり、自己管理能力が向上しています。今後も引き続きサポートを続けることで、さらなる安定した生活を目指しています。
まとめ
双極性障害を抱えるD様の訪問看護の事例は、早期発見と継続的なサポートがいかに重要かを示しています。訪問看護では、ご本人の希望や生活状況に寄り添いながら、病状の安定と生活の質の向上を目指します。
双極性障害や精神科訪問看護に関心がある方は、ぜひ一度ご相談ください。私たちは、ご本人とそのご家族にとって最善の支援方法を一緒に考え、実践していきます。