発達障害があって仕事がうまくいかない——職場で困りやすいこととその対処法
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「仕事のミスが多くて怒られてばかり」「締め切りが守れない」「同僚と話が合わない、空気が読めないと言われる」——発達障害のある方から、こういった悩みをよく聞きます。
発達障害(ADHD・ASD・LDなど)のある方が職場で困難を抱えやすいのは、努力が足りないからでも、やる気がないからでもありません。脳の機能の特性が、特定の状況で困難を引き起こしているのです。
この記事では、発達障害のある方が職場で困りやすいポイントと、実際に役立つ対処法・支援を、精神科訪問看護師の視点からお伝えします。
目次
発達障害のある方が職場で困りやすいこと
ADHD(注意欠如多動症)の場合
- 締め切りや約束の時間を忘れる
- 同時に複数の仕事を処理できない(優先順位がつけられない)
- 集中が続かない(ぼーっとする)、または過集中で気づいたら時間が大幅に過ぎている
- 衝動的な発言・行動で職場の関係が壊れる
- 書類・物品の管理が苦手(なくす・散らかる)
- 会議中に話を聞き続けることが難しい
ASD(自閉スペクトラム症)の場合
- 暗黙のルール・空気の読み方がわからない
- 指示が曖昧(「いい感じに」「適当に」)だと動けない
- 変更・イレギュラーへの適応が難しい
- 感覚過敏(音・光・匂いなど)で職場環境がつらい
- コミュニケーションが文字通りすぎて、比喩や冗談が伝わらない
- 報連相のタイミングがずれる(完璧になってから報告しようとする)
「努力が足りない」ではない——なぜ困難が起きるのか
発達障害による職場の困難は、「性格の問題」や「社会性の欠如」ではなく、脳の神経回路の特性から来ています。たとえばADHDでは、実行機能(計画・優先順位づけ・衝動抑制)を担う前頭前皮質の機能が定型発達の方と異なることが知られています。
「なぜ普通のことができないのか」という問いの立て方自体が、当事者を追い詰めます。「なぜこの人は他の人と違う反応をするのか」という問いに変えると、支援の方向性が見えてきます。
また、二次障害として、職場でのつまずきからうつ病・適応障害・不安障害が生じることがあります。「仕事がうまくいかない」だけでなく、「気力がわかない」「眠れない」「会社に行こうとすると体が動かない」という状態になっていれば、まず精神科・心療内科への受診が先決です。
職場で使えるセルフサポートの工夫
診断の有無にかかわらず、特性に合わせた自己管理の工夫が仕事のパフォーマンスを上げることがあります。
タスク管理を「外に出す」
頭の中で覚えておこうとするのをやめ、すべてリストに書き出します。ToDoアプリ(Todoist・Notionなど)、ホワイトボード、付箋——頭の外に「見える化」することで、忘れや抜け漏れが大幅に減ります。
時間を「区切る」
25分集中・5分休憩のポモドーロ・テクニックは、ADHDのある方に効果的とされています。タイマーアプリを使って時間の感覚を外部化することで、過集中や時間の経過感覚のなさに対応できます。
感覚過敏への対策
ノイズキャンセリングイヤホン・耳栓の使用、席の位置変更(人の動線から外れた場所)、照明の調整など、感覚刺激を減らす工夫が有効です。職場に許可を求める際は「集中しやすい環境を整えたい」と具体的に伝えるとスムーズです。
コミュニケーションを「明文化」する
「空気を読む」のが難しい場合、「わからないことはすぐ聞く」「指示はメモで確認する」「曖昧なときは「〇〇ということでよいですか?」と確認する」というルーティンを作ると、ミスコミュニケーションが減ります。
職場に伝える——合理的配慮を求める権利
2016年の障害者差別解消法の施行により、障害のある方が事業者に「合理的配慮」を求める権利が認められています(2024年4月からは民間企業にも義務化)。
合理的配慮の例として以下が挙げられます。
- 指示を口頭だけでなく書面やチャットでも伝えてもらう
- 業務の優先順位を上司と一緒に決める定期面談の設定
- 席の位置変更(騒がしい場所を避ける)
- 勤務時間・休憩の柔軟な設定
- マルチタスクを少なくした業務分担
これらを求めるためには、診断書や主治医の意見書が必要になることが多いです。「開示するかどうか」は本人の選択です。開示のメリット(支援を受けやすい)とデメリット(偏見・人事評価への影響)を主治医・支援者と相談しながら決めていきましょう。
専門的なサポートを使う——就労支援・訪問看護
就労移行支援
就労移行支援事業所では、発達障害のある方が職場で必要なスキルを身につけるプログラムを提供しています。ビジネスマナー・コミュニケーション・集中力トレーニングなどを、集団または個別で学ぶことができます。利用は原則無料(所得によって上限あり)で、原則2年間使えます。
障害者就労定着支援
就職後の職場定着を支援するサービスです。就職してからうまくいかない場合、支援員が職場に同行したり、本人・職場の両側に対してコーディネートを行うことができます。
精神科訪問看護の役割
発達障害のある方が仕事でつまずいているとき、訪問看護師は以下のような関わりができます。
- 生活リズムの安定化(睡眠・食事・起床のサポート)
- 感情の波の観察と主治医への情報提供
- 「今日職場で何があったか」を一緒に整理する振り返り
- 仕事の悩みを言語化し、主治医や就労支援につなげる
- 薬の効果・副作用の確認(ADHDに対する薬物療法を受けている場合)
仕事がうまくいかないストレスで精神状態が悪化すると、仕事のパフォーマンスもさらに落ちる悪循環が生まれます。「仕事の悩み」と「こころの状態」は切り離せません。訪問看護はその両方に関わります。
転職・就労変更も選択肢のひとつ
「今の職場が発達障害の特性と合わない」と感じた場合、転職や就労形態の変更も選択肢です。これは「逃げ」ではありません。
たとえば、以下のような職場・仕事が特性に合いやすいとされています。
- ADHD向き:変化が多く刺激的な仕事、締め切りが明確、短期集中できる、フリーランス・在宅ワーク
- ASD向き:ルーティンが明確、専門的な知識が活かせる、人との接触が少ない、システム・データ・技術系
ただし、転職だけで問題が解決することは少なく、特性の理解と自己管理スキルが伴って初めて定着につながります。就労移行支援や支援者と一緒に「自分に合った働き方」を探す過程を大切にしてください。
「診断がない」場合でも——グレーゾーンの方へ
「発達障害かもしれないけど、診断はついていない」「検査したら正常範囲だった」という方も、職場での困難が現実にある場合は支援を受ける権利があります。いわゆる「グレーゾーン」の方でも、生きづらさは本物です。
診断があるかないかに関係なく、職場で困っていることを主治医に伝え、主治医の指示のもとで訪問看護を受けることは可能です(うつ病や適応障害など精神疾患の診断がある場合)。また、発達障害の正式な診断を求める場合は、発達障害の専門外来や、発達障害者支援センターへの相談が入口になります。
薬物療法について——ADHDの治療薬
ADHDに対しては、コンサータ(メチルフェニデート)やストラテラ(アトモキセチン)などの治療薬が使われます。これらは集中力・衝動性・作業記憶の改善に効果があるとされていますが、副作用(食欲低下・不眠・動悸など)もあります。
薬を使うかどうかは、主治医との相談のもとで決めることです。「薬に頼りたくない」という気持ちは尊重されますが、薬が生活の質を大幅に改善することもあります。生活習慣の工夫と薬物療法を組み合わせることで、より安定した効果が得られることが多いです。
二次障害としてのうつ・適応障害への対処
発達障害のある方が職場で長期間つまずき続けると、うつ病や適応障害を発症する「二次障害」が起きやすいです。「なんでできないんだろう」という自己嫌悪が積み重なり、心が折れていく過程を私はたくさん見てきました。
二次障害のサインとして、以下に注意が必要です。
- 朝起きられなくなった・職場に行こうとすると体が動かない
- 常に「消えてしまいたい」「楽になりたい」という気持ちがある
- 食欲がない・体重が急激に変わった
- 仕事のミスが以前より増えた・集中できなくなった
こういった状態が続いているなら、まず休職や受診が最優先です。発達障害の特性への対処は、心身が回復してから取り組んでいけばいい。二次障害を放置したまま「工夫で乗り越えよう」とするのは、骨折した足で走り続けるようなものです。
支援者・家族へ——接し方で変わること
発達障害のある方を支える上司・同僚・家族の方へも、一言お伝えします。「なんでそんなこともできないの?」という問いは、本人には届きません。「どうしたらできるようになるか」「どの部分が難しいか」という問いに切り替えてください。
本人が「困っていること」を正直に言える関係性を作ることが、最大の支援になります。「言っても怒られる」「また呆れられる」という環境では、問題が隠れたまま悪化します。
まとめ——「うまくいかない」のはあなたのせいではない
発達障害のある方が職場でつまずくのは、特性と環境のミスマッチです。工夫・配慮・支援を組み合わせることで、多くの方が職場に定着できるようになっています。
発達障害のある方が、無理をして働き続けることで燃え尽きてしまうケースは後を絶ちません。「仕事が続かない」「またミスをした」と自分を責める前に、まず専門家に相談してみてください。あなたが「うまくできない」のは、努力の問題ではなく、特性と環境のミスマッチです。適切なサポートと工夫を組み合わせることで、働き続けることは十分可能です。リライフ訪問看護ステーションでは、発達障害のある方の日常生活・就労支援に関する相談にも対応しています。柏原市・八尾市・東大阪市エリアで精神科の主治医のいる方が対象です。
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