統合失調症の家族との接し方——何て声をかければいいの?現場の看護師が伝えること
「リライフ訪問看護ステーション」
大阪市の一部(平野区・生野区・東住吉区など)対応
LINEは24時間送信可能です。内容を確認後、3営業日以内を目安にご返信いたします。
ご相談内容は適切に管理し、外部に漏れないよう配慮しています。
電話受付:平日・土曜・祝日 8:30〜17:30(日曜・年末年始休み)
「何て声をかければいいかわからない」「何をしても怒らせてしまう」「正直、どう接していいか疲れてきた」——家族が統合失調症と診断されたとき、こうした気持ちを抱えるご家族は少なくありません。
精神科訪問看護師として、私はご本人だけでなく、支えるご家族の方とも話す機会が多くあります。「自分の接し方が悪かったのか」と自分を責めているご家族を見るたびに、もっと現場の情報を届けたいと思っています。
この記事では、統合失調症の方への接し方について、現場でお伝えしていることをまとめました。
目次
まず知っておいてほしい:統合失調症は「接し方が原因」ではない
最初に、とても重要なことをお伝えします。
統合失調症は、脳の神経伝達物質(ドーパミンなど)のバランスの乱れに関連する精神疾患です。家族の接し方が「原因」で発症するものではありません。
かつては「家族関係が統合失調症を引き起こす」という誤った説が広まっていた時期もありましたが、現在の医学的見解では否定されています。「自分の育て方が悪かったのか」「もっと早く気づいていれば」という自責の念を抱えている方がいますが、原因はそこではありません。
統合失調症の症状を理解することが接し方の基本
接し方を考える前に、統合失調症でどのような症状が出るかを知っておくことが助けになります。
陽性症状(活発に現れる症状)
- 幻聴:誰もいないのに声が聞こえる。「悪口を言われている」「命令される」といった内容が多い
- 妄想:「狙われている」「テレビが自分のことを言っている」など、現実と異なる確信を持つ
- まとまりのない言動:話の脈絡がつながりにくい、行動が予測しにくい
陰性症状(意欲・感情が低下する症状)
- 感情の起伏が乏しくなる(感情が平坦に見える)
- 意欲や自発性が低下し、何もしない状態が続く
- コミュニケーションが減る
- 社会的な活動が難しくなる
陽性症状は目立つため家族も気づきやすいですが、陰性症状は「怠けているように見える」と誤解されることがあります。しかし、これも症状の一部です。
接し方のポイント——現場で伝えていること
① 幻聴・妄想を「否定も肯定もしない」
「誰かに監視されている気がする」と言われたとき、「そんなことはない」と否定すると、本人は「わかってもらえない」と感じ、関係が壊れやすくなります。かといって「そうだね、監視されてるね」と迎合することも、妄想を強化することにつながる可能性があります。
おすすめの返し方は、「それはつらいね」「怖かったんだね」と、事実ではなく感情に寄り添う言葉です。症状の内容には同意せず、感じているつらさや恐怖は認める——この姿勢が、本人との関係を保つ鍵になります。
② 責めない・急かさない
「なんでそんなことをするの」「もっとしっかりして」という言葉は、統合失調症の方には大きなストレスになります。責めたり、急かしたりすることで症状が悪化することがあります。
「何もしない」「部屋から出てこない」という状態も、陰性症状として理解してほしいと思います。「怠け」ではなく、脳がエネルギーを節約しようとしている状態です。
③ 感情的な高ぶりを避ける(EEを下げる)
精神科の分野では「感情表出(EE:Expressed Emotion)」という概念があります。家族が批判的な言葉、敵意、過干渉といった感情表出が高い状態(高EE)にあると、本人の再発リスクが高まるという研究結果があります。
これは「感情を抑えろ」ということではありません。ただ、家の中での感情的な爆発(怒鳴る・泣き崩れる)は、本人にとって大きな刺激となります。感情を別の場所で発散させること——支援者への相談、家族会への参加——が大切です。
④ 服薬を継続できる環境をつくる
統合失調症の再発を防ぐために、服薬の継続は非常に重要です。しかし「薬を飲むと頭がぼーっとする」「もう良くなったから要らない」と自己判断でやめてしまうことがあります。
家族としてできることは、「薬を飲んだか」と毎日確認することではなく(これは過干渉になりやすい)、服薬を負担なく続けられる環境——たとえば、飲み忘れをカバーするピルケースを置く、診察の日を一緒に管理する——をさりげなくサポートすることです。
⑤ 「普通」を求めすぎない
「いつになったら普通に戻るのか」という言葉を、ご家族から聞くことがあります。気持ちはよくわかります。しかし、統合失調症は「完全に元通りになる」ことを目指す病気ではなく、「症状と折り合いをつけながら生活できる状態を目指す」ことが現実的です。
「昨日より今日、少し穏やかだった」「今日は食事が食べられた」——小さな変化を目標に設定することが、ご本人にとっても家族にとっても負担が少ない関わり方です。
家族が疲弊してしまう前に
家族が支えるとき、忘れてほしくないことがあります。それは「家族自身の健康と生活も大切にしてほしい」ということです。
ご家族が24時間支え続けることには限界があります。「もう疲れた」「自分がどうにかなりそう」と感じているなら、それはSOSのサインです。
家族会を活用する
「家族の会」は、精神疾患を持つご家族を支える当事者家族の集まりです。全国各地にあり、同じ立場の方と話せる場として、多くの家族に活用されています。「自分だけじゃなかった」という安心感や、「こういう声のかけ方をしている」という具体的なヒントが得られます。
支援者に相談する
精神科のソーシャルワーカー(PSW)や、訪問看護師に相談することも有効です。「本人のことを話す場所」として活用してください。ご家族からの相談は、本人の状況を把握する上でも重要な情報です。
レスパイトを使う
デイケアやグループホーム、ショートステイなどのサービスを活用して、家族が「休む時間」を意識的につくることも重要です。24時間寄り添うことが、必ずしも良い支援にはなりません。
急性期・安定期・回復期で接し方を変える
統合失調症には「急性期(症状が強く出ている時期)」「安定期(症状が落ち着いている時期)」「回復期(安定期から社会復帰を目指す時期)」という段階があります。それぞれで適切な接し方が異なります。
急性期の接し方
幻聴・妄想・混乱が強く出ている時期は、刺激を少なくすることが基本です。静かな環境を保ち、長時間の会話や複雑な話題は避けてください。「今日の調子はどう?」程度のシンプルな言葉かけが適しています。入院が必要な場合は、主治医や病院スタッフの指示に従ってください。
安定期の接し方
症状が落ち着いてきたら、少しずつ会話を増やし、生活の中での役割(家の簡単な手伝いなど)を持てるよう応援してください。「元通りに戻ってほしい」という期待を強くぶつけず、現在できていることに注目することが大切です。
回復期の接し方
デイケアや就労支援など、社会参加の機会を一緒に検討できる時期です。「焦らなくていい」「あなたのペースでいい」という姿勢で関わってください。失敗や後退があっても、責めずに受け止める関係が回復の土台になります。
精神科訪問看護が家族を支えることもできる
精神科訪問看護は、ご本人だけでなく、ご家族へのサポートも担っています。「どんな声かけをしたらいいか」「今の状態が悪化しているのかどうかわからない」「本人が受診を拒否している」——こうした悩みに、具体的に関われるのが訪問看護師の役割です。
リライフでは、大阪府柏原市・八尾市・東大阪市を中心に精神科訪問看護を提供しています。「家族として何か相談したい」という場合でも、電話やLINEでご連絡ください。
「受診させたいけど、本人が拒否している」ときはどうするか
家族が最も困ることのひとつが、「明らかにおかしいのに本人が受診を拒否している」という状況です。
統合失調症の特徴のひとつに、「病識の欠如(自分が病気だという認識が薄い)」があります。幻聴や妄想を、本人は「現実に起きていること」と感じているため、「病院に行こう」と言われても受け入れにくいのです。
強制的に連れて行くことのリスク
「無理やり連れて行く」という方法は、信頼関係を大きく傷つけることがあります。やむを得ない緊急事態でない限り、強制的な受診よりも、本人が「行ってみようかな」と思える関係づくりを優先してください。
段階的なアプローチ
- 「体調が心配で」「睡眠の相談だけ」という切り口で、心療内科を提案する
- 主治医のいる医療機関に家族だけで相談に行き、対応方法を聞く
- 精神科訪問看護師や保健師に相談し、家庭訪問から始める
- 地域の精神保健福祉センターに相談する
「本人が受診しないと何もできない」と感じるかもしれませんが、家族や支援者が動ける範囲は意外と広いです。一人で抱え込まず、専門機関に相談することを強くおすすめします。
緊急時の対応
「自分や他者を傷つけるかもしれない」という切迫した状態のときは、精神科救急や地域の精神保健担当窓口(保健センター・保健所)に相談してください。強制入院(医療保護入院)の手続きについても、保健所の精神科相談員が案内してくれます。
日々の記録をつけておく
家族が気になる言動を簡単にメモしておくと、いざ相談するときに役立ちます。「〇月〇日、夜中に独り言が多かった」「食事をほとんど食べなかった」など、日時と状況を記録しておくことで、医療者や支援者に正確な情報を伝えることができます。
また、「再発のサイン(予兆)」は人によって異なります。「眠れない夜が続く」「独り言が増える」など、過去の経験から本人固有のサインを把握しておくことが、早期対応につながります。
まとめ
- 統合失調症は家族の接し方が原因ではない——自己責任ではありません
- 幻聴・妄想は否定も肯定もせず、感情に寄り添う言葉で返す
- 責める・急かす言葉は症状を悪化させやすい
- 服薬継続のさりげないサポートが再発予防に重要
- 「普通に戻る」より「今よりほんの少し安定する」を目標に
- 家族自身も休む・相談するという選択肢を持ってほしい
- 急性期・安定期・回復期それぞれで接し方を柔軟に変える
家族として支えることは、決して一人でできることではありません。支援者と一緒に、少しずつやっていきましょう。
「リライフ訪問看護ステーション」
大阪市の一部(平野区・生野区・東住吉区など)対応
LINEは24時間送信可能です。内容を確認後、3営業日以内を目安にご返信いたします。
ご相談内容は適切に管理し、外部に漏れないよう配慮しています。
電話受付:平日・土曜・祝日 8:30〜17:30(日曜・年末年始休み)

