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解離性障害とは?——「記憶がない」「自分が自分でない感覚」の正体

心の不調は、ひとりで抱え込まないでください。
“精神科に特化”した訪問看護ステーション
「リライフ訪問看護ステーション」
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「昨日のことが全然思い出せない」「気づいたら知らない場所にいた」「自分の手なのに、自分の手に見えない」——そんな体験をしたことがある方はいませんか。

これらは「解離(かいり)」と呼ばれる現象で、精神的なストレスやトラウマに対する心の自己防衛反応として起きます。私は精神科訪問看護師として、解離の症状を抱えながら生活している方の支援をしてきましたが、解離は「頭がおかしい」でも「嘘をついている」でもありません。

この記事では、解離性障害の症状・種類・原因・治療法と、訪問看護でできるサポートについて、現場の視点からお伝えします。

解離とは何か——「ここにいるのに、どこかに消えてしまう」感覚

解離とは、意識・記憶・感情・行動・感覚などが、通常は統合されているはずの「自分」からバラバラに切り離されてしまう状態です。

たとえば、車の運転をしていて「いつの間にか目的地に着いていた」と感じることは誰でもあります。これは軽い解離の一例です。問題となるのは、この「切り離し」が強度になり、日常生活に支障をきたすときです。

解離の働きそのものは、耐えがたいストレスや恐怖から心を守るための自然なメカニズムです。しかし、その反応が過剰になったり固定化したりすることで、「解離性障害」という状態になっていきます。

解離性障害の主な種類

DSM-5(アメリカ精神医学会の診断基準)では、解離性障害は大きく以下の3つに分類されます。

解離性健忘

重要な個人情報や出来事の記憶が突然失われる状態です。「昨日何をしていたか覚えていない」「自分の名前や家族のことが思い出せない」といったケースがあります。

特定の出来事(たとえばトラウマ体験)だけが抜け落ちる「局所的健忘」が最も多く、まれに自分の過去のすべてが失われる「全般的健忘」も起こります。また、突然見知らぬ場所に移動してしまう「解離性遁走」が伴うこともあります。

解離性同一性障害(DID)

かつて「多重人格」と呼ばれていた障害です。一人の人の中に複数の「人格状態(交代人格)」が存在し、それぞれが異なる記憶・感情・行動パターンを持ちます。

人格が交代するとき、本人には記憶がないことが多く、「気づいたら知らない場所にいた」「自分の字じゃないメモが残っていた」という形で表れます。重篤な小児期トラウマ(虐待・性的被害など)が背景にあることが多いとされています。

離人症・現実感消失障害

「自分が自分でない感じ」「幽体離脱したように自分を外から見ている」「世界がガラス越しに見える」という感覚が特徴です。

自分が消えてしまうわけではなく、現実認識は保たれているにもかかわらず、「ここにいる実感がない」という苦しさがあります。パニック障害や不安障害に合併することも多く、若い世代に多く見られます。

解離はなぜ起きるのか——トラウマとの深い関係

解離の最大のリスク要因は、幼少期のトラウマ体験です。虐待・ネグレクト・性的被害・目撃体験などの重篤なストレスに繰り返しさらされたとき、子どもの心は「感じないようにする」「ここにいないようにする」という防衛を発達させます。これが、のちに解離性障害として定着することがあります。ただし、成人後の交通事故・自然災害・性暴力などの出来事がきっかけになることもあります。

解離が起きやすい人の特徴として、以下が挙げられます。

  • 幼少期に安全な愛着関係を持てなかった
  • 慢性的な否定・批判・無視の環境で育った
  • 繰り返すトラウマ体験がある
  • 感受性が強く、感情処理が繊細

「なぜ自分だけこんな感覚になるのか」と自己否定しやすいのですが、それは性格の弱さではなく、心が生き延びるために覚えた方法なのです。

解離と間違えられやすい状態

解離の症状は、他の精神疾患や身体疾患と混同されやすく、正しい診断に時間がかかることがあります。よく間違えられるものを整理します。

統合失調症との違い

解離性同一性障害の「声が聞こえる」という症状は、統合失調症の幻聴と間違えられることがあります。ただし、解離の場合は「頭の中から聞こえる」感覚で、現実検討力は保たれていることが多いです。

てんかんとの違い

解離性健忘の記憶の空白や、解離による意識変容は、てんかん発作と混同されることがあります。MRIや脳波検査で器質的な異常が見られないことが、解離の鑑別ポイントになります。

ADHDや境界性パーソナリティ障害との重なり

注意集中の困難や感情の不安定さが共通するため、これらの診断と重複して見落とされることもあります。丁寧な生育歴の聴取が診断の鍵になります。

日常生活への影響——「普通に見える」ことの苦しさ

解離性障害の方の多くは、外から見ると「普通の人」に見えます。症状が出ていない時間帯には会話もでき、仕事もこなせることがあります。だからこそ、「嘘をついている」「演じている」と誤解されやすいのです。

実際には、以下のような困りごとが日常的に起きています。

  • 会議や授業の内容が記憶に残らない
  • どこかに行った記憶がなく、荷物や傷跡が増えている
  • 感情が麻痺して、悲しいことも嬉しいことも「遠い」
  • 解離状態のときに自傷が起き本人が覚えていない
  • 人間関係の維持が難しく、誤解が重なる

「また覚えていない」「また気づいたら時間が経っていた」という繰り返しが、自己嫌悪や絶望感につながっていきます。この苦しさを周囲が理解することがとても重要です。

治療とサポート——回復は可能か

解離性障害の治療は、段階的なアプローチが基本です。焦って「トラウマを処理しよう」と深掘りすることは、症状を悪化させることがあります。

安定化フェーズが最初の一歩

まず取り組むのは「安全を確保する」「感情の波を落ち着ける」「日常生活を整える」ことです。解離が起きにくい環境を作り、日々の生活リズムを安定させます。グラウンディング(今ここにいる感覚を取り戻す技法)も有効です。たとえば「足の裏の感覚を感じる」「今見えているものを5つ言う」など、感覚を今に引き戻す練習が効果的です。

EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)

トラウマ記憶の処理に効果が認められている心理療法です。眼球を動かしながら記憶を想起することで、記憶に対する感情的な反応を和らげます。ただし、解離が強い状態では行わないなどの配慮が必要なため、専門の資格を持つセラピストのもとで行います。

内的家族システム療法(IFS)・その他のアプローチ

解離性同一性障害の治療では、交代人格との「対話」「協力関係の構築」を目標にする内的家族システム療法が用いられることがあります。各人格がそれぞれの役割を持ち、全体として機能できるようサポートします。

薬物療法の位置づけ

解離そのものに直接効く薬はありません。ただし、合併するうつ病・不安障害・PTSDの症状に対して、抗うつ薬や抗不安薬が処方されることがあります。薬は補助的な役割と位置づけられています。

精神科訪問看護が解離のある人をどう支援するか

解離性障害の方は、通院自体が難しいことが少なくありません。診察室に向かう途中で解離が起きて、「気づいたら違う場所にいた」という経験を持つ方もいます。訪問看護は、そういった方が安心して医療とつながり続けられるための橋渡しになります。

私が訪問の中で大切にしていることをいくつか挙げます。

毎回「今ここ」を確認する

訪問時に「今どんな感じですか?」と聞くだけでなく、「今日は何日ですか?今いるのはどこですか?」という小さな確認を会話の中に自然に入れます。解離が起きているときは、日付や場所の感覚がぼんやりすることがあります。グラウンディングを一緒に行うこともあります。

人格の交代に動揺せず関わる

DIDの方で、訪問中に人格が交代することがあります。突然別の話し方になったり、「あなたは誰?」と言われたりすることもあります。そういうとき、私は慌てず「こんにちは、リライフの訪問看護師です」と穏やかに名乗り直します。どの人格に対しても同じ姿勢で関わることが、信頼につながります。

記憶の空白を責めない

「先週お話しした〇〇、覚えていますか?」——覚えていない場合もあります。そのことを責めたり、驚いた表情を見せたりしません。記録を持参して「前回こんなことを話しました」と伝える形で、記憶の補完をサポートします。同じことを繰り返すことを苦にしない姿勢が大切です。

自傷への穏やかな対応

解離状態での自傷は、本人が気づかないうちに起きることがあります。傷を見つけたときも「なぜ?」と問い詰めるのではなく、「傷があるのに気づきました。今どんな状態か教えてもらえますか?」と安全を確認することから始めます。責めることなく、ただそこにいる。それが訪問看護師の役割です。

解離を抱えながら生きていくために——家族・周囲の人へ

解離性障害の方と関わる家族や友人が、最初に戸惑うのは「突然記憶がない」「さっきと別人みたいに変わった」という経験です。「嘘をついているのか」「自分が何かしたのか」と不安になることもあります。

大切なのは、「あなたの責任ではない」「あなたのせいではない」と理解することです。解離は、その人が過酷な状況を生き延びるために発達させた応答であって、周囲の人を傷つけようとしているわけではありません。

家族ができることとして、以下を意識してみてください。

  • 「なぜ覚えていないの?」と責めない
  • 急に変わっても慌てず、同じ穏やかさで接する
  • 医療機関・訪問看護と連携し、一人で抱え込まない
  • 自分自身のケアも忘れない(家族向けのカウンセリングも有効)

まとめ——あなたの「不思議な感覚」を否定しないでほしい

解離は、とても過酷な体験を生き延びてきた心が選んだ方法です。「おかしい」でも「弱い」でもありません。

「記憶がない」「自分じゃない感じがする」「急に別の気持ちになる」——こういった体験を誰かに話せずに一人で抱えてきた方がたくさんいます。まずは「そういう体験がある」と言葉にしてみることが、回復の最初の一歩です。

リライフ訪問看護ステーションでは、解離性障害を含む複雑なトラウマ関連の状態についても、訪問看護として継続的に関わることができます。柏原市・八尾市・東大阪市エリアで、精神科の主治医のいる方が対象です。一人で悩まず、まずはご相談ください。

心の不調は、ひとりで抱え込まないでください。
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